
土地や建物を売って利益が出たとに想定しなければならないことの一つは税金です。税金について詳しい知識があれば対策ができますが、馴染みがなければ何をして良いのか分かりません。
本記事では不動産売却に関する税金について詳しく解説。「このような税金があるんだ」とイメージできるでしょう。また、節税できるポイントもまとめています。
Contents
不動産の売却に関する税金の種類を確認!
最初に、不動産を売却し利益が出たときは以下の表にある税金がかかります。
種類 | 概要 |
所得税 | ◎所得がある個人にかかる税金
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住民税 | ◎都道府県や市区町村に納める
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復興特別所得税 | ◎東日本大震災からの復興を目的に必要な資金を確保する税金
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印紙税 | ◎収入印紙を契約書に貼るため |
登録免許税 | ◎不動産の名義変更時に発生する |
消費税 | ◎不動産会社へ支払う仲介手数料などで発生 |
「所得税・住民税・復興特別所得税の利益」にかかる税金をまとめて「譲渡所得税」と呼びます。印紙・登録免許税・消費税は不動産売却の手続きにかかる税金です。
不動産を売却した利益にかかる譲渡所得税とは?
ここでは譲渡(じょうと)所得税について説明をします。譲渡所得とは簡単に言うと「不動産を売却したときに得た利益」です。この利益に対してかかる税金が「譲渡所得税」です。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は以下のようにして算出されます。
不動産を売ったときの代金-不動産を購入したときの費用-売るときにかかった経費
不動産を購入したときの費用を「取得費」、売るときにかかった経費を「譲渡費用」と言います。
例えば、4,000万円で購入した土地が5,000万円で売れ、譲渡費用として150万円かかったときの利益は850万円です。
取得費に含まれるもの
土地を購入するときは土地代以外にも必要な費用があります。取得費として考えらるものをまとめると次のようになります。
- 土地や建物の購入費用
- 建築費用
- 購入時に不動産会社へ支払った仲介手数料
- 購入時にかかった税金(不動産取得税・登録免許税・印紙税など)
- 造成費用・測量費・解体費用など
建物の取得費は経過年数に応じて差し引く必要があります。いわゆる「減価償却」という考え方です。建物構造などによって細かい決まりがあります。
譲渡所得にかかる税率
実際に納める税金の額は譲渡所得に税率をかけて出します。税率は土地を取得して売却までの所有期間により変わります。それをまとめた表は以下の通りです。
所有期間 | 税率と内訳 |
短期:5年以下 | ◎合計:39.63%
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長期:5年超 | ◎合計:20.315%
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長期:10年超 | ※マイホーム軽減税率の特例
◎譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%
◎譲渡所得6,000万円超の部分:20.315%
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譲渡所得がいくらであっても税率は同じです。短期と長期ではおよそ20%ほど税率に違いがあります。また、特例もあるので合わせて確認をしてください。
所有期間の考え方
所有期間は不動産を売った年の1月1日現在の状況で決まりまります。不動産を売った日ではありません。
不動産売却にかかる税金は節税できる?
ここでは「特別控除」「取得費」「譲渡費用」など節税に関することを解説します。
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除を使う
自宅を売ったときに譲渡所得から3,000万円を引くことができる特例があります。
例えば、譲渡所得が5,000万円でも特別控除を利用すれば、譲渡所得が2,000万円です。
- 自宅(マイホーム)を売却する。
- 住んでいない住宅の場合は住まなくなって3年目の末までが対象になる。
- 前年や翌々年に控除の適用を受けていない。
家を取り壊して土地だけを売る場合でも1年以内であれば居住用財産になります。しかし、取り壊した後、他人に貸したりする(例:駐車場)と対象にならないので気をつけてください。
共有名義のマンションを売ったときの特別控除3,000万円の利用
夫婦共有名義で所有のマンションを売却した際、夫婦それぞれに3,000万円ずつ控除することができます。
例えば、ある夫婦が共有持ち分割合を50%ずつ持っていたマンションを売って、譲渡所得が4,000万円あった場合を考えてみます。
もし、夫や妻だけの保有になっていると、特別控除を適用しても1,000万円の譲渡所得が出て、税金がかかります。
取得費
土地や建物を取得費に関する資料をできるだけ準備することで、節税効果の可能性が上がります。
取得費が分からないときは?
取得費が不明でも次のような書類が準備できれば、もしもとき税務署への説明に使えることがあります。
- 通帳の出金履歴
- 住宅ローンの金銭消費貸借契約書
- 抵当権設定額
- 売買契約書の写し
- 市街地価格指数や着工建築物構造別単価から、土地や建物の取得費を算出
1番・2番・3番の資料では購入時のおおよその金額を推測するときの参考になります。
4番の資料は、「販売に携わったディベロッパー」や「仲介してくれた不動産会社」などから写しをもらって用意します。
5番は、「一般財団法人日本不動産研究所」や「一般財団法人建設物価調査会」が公表している数値を参考に計算します。
取得費にできるもの
不動産を購入した当時取得のために、次のようなものもがあれば取得費にできます。
- 仲介手数料
- 司法書士の手数料
- 仲介手数料
- 登録免許税
- 売買契約書に使用した印紙代
- 不動産取得税
- 立ち退き料や移転料
- 建物の取り壊し費用
- 測量費
- リフォーム費用
建物の購入に関わる費用は減価償却されるので気をつけてください。つまり、建物取得やそれに関わる購入当時の費用がそのまま取得費とはなりません。
一例をあげるならば、仲介手数料も土地と建物の購入額に応じて案分されます。建物に案分された仲介手数料も減価償却の対象になります。
譲渡費用はすべて計上
不動産を売却したときに関わる費用はすべて計上するようにしましょう。一つでも漏れがあれば譲渡所得が増えてしまうのでもったいないです。
売却したとき、売却する目的で以下の費用があれば譲渡費用にできます。
- 仲介手数料
- 広告料・鑑定料・測量費
- 売買契約書に使用した印紙代
- 立ち退き料
- 土地だけを売るためにその土地の上にあった建物を取り壊したときの費用と建物の取得費
- 買主と交渉するための費用(通信費や交通費など)
他に考えらる費用があれば税理士や税務署に相談してみてください。ただし、以下のような費用は認められないでしょう。
- 引越し代
- 売却に無関係な費用(宿泊費・飲食代など)
- 抵当権抹消費用
- 遺産分割のための費用
税率が下がる年に売却する
譲渡所得税の項目でも説明しましたが、不動産を取得してから5年以内(39.63%)と5年超(20.315%)では税率が大きく変わります。
短期で売っても利益が大きく見込めるのであれば別ですが、5年を超えるまでの残りの期間を考えて、売却のタイミングを計るようにしてください。
相続した不動産を売却するときの税金
自分で購入していなくても相続により不動産を取得する場合もあります。
「自分が住んでいる家はあるので、相続しても住むことはない。だから、親の家と土地を売りたい」というときなどの税金はどのようになるのでしょうか?
住んでいたかどうかが分かれ目になる
相続した不動産でも売却によって発生した譲渡所得には所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。しかし、特例に関して次のようなケースで分かれます。
- 子が相続した家に自分が保有する住宅として住んでいた場合⇒特例の対象になる
- 子が相続した家に住んでいなかった場合⇒特例を受けられない
1番のケースでは「居住用財産」とみなされます。次の特例の対象になります。
- 3000万円の特別控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
- 特定の居住用財産の買換え
- 10年超所有の場合の軽減税率
- マイホームの買換えの場合の譲渡損失の繰越控除
2番のケースでは、譲渡所得があれば原則として通常通りの税金を納めることになります。
相続した不動産を売却するときのポイント
次のようなことに心にとどめて売却を検討してください。
- 親がその不動産を買ったときの代金や手数料で取得費を算出する。
- 取得費が不明の場合は、売却額の5%を取得費にできる。
- 相続したとき子が登記費用や不動産取得税を支払っていれば、取得費に含まれる。
- 住宅の所有期間のスタートは、親がその住宅を取得した日。子が相続した日ではない。
枠のポイントとは別に「相続税の一定額を取得費に加算できる」場合があります。「取得費加算の特例」と呼ばれていますが、要件があります。
- 相続などで財産を取得した人が対象。
- その財産を取得した人に相続税が課されている。
- 相続開始の翌日から3年10か月以内に、相続した財産を売っている。
確定申告の方法や税金の支払いはいつ?
譲渡所得と納税額が分かったら、確定申告をします。もし利益が出ていないときは申告は不要です。しかし、譲渡益・譲渡損失の特例を適用したいときは、利益がなくても確定申告を行ってください。
確定申告の手順
納税地の税務署に確定申告書を提出します。期間は基本的に翌年の2月16日から3月15日の間です。ただし、年によって日程が変化する場合があります。最終日が土日や当時の情勢が理由です。
- 必要な書類をそろえる。
- 譲渡所得税がいくらあるのかを算出する。
- 書類に記載する。
- 税務署に書類を提出する。
- 納税する
必要な書類
- 不動産売却や特例に関する書類
- 譲渡所得の内訳書
- 申告分離課税の申告書
- 確定申告書B
1番の書類は不動産会社や法務局で揃えられます。2番から3番の書類は国税庁の公式サイトか税務署で入手可能です。
税金の支払いはいつ?
譲渡所得税の内、所得税や特別復興所得税は、確定申告の期間内に現金や口座振替で納めます。住民税は確定申告をした年の6月以降に支払います。
不動産売却時に税金で注意するポイント!
ここでは気を付けて欲しいポイントをまとめています。すでに説明している部分もありますが、改めて確認してください。
不動産の所有期間
所有期間は税率に大きくかかわってくるので考え方はとても大切です。
例えば、2021年9月1日に売却しても2021年1月1日時点に戻るとまだ売却されていないことになります。つまり、2021年12月31日まで所有していたとみなされます。
所得税・住民税の支払い時期
譲渡所得税のうち、所得税と特別復興所得税は確定申告の期間内に支払いをします。しかし、住民税は6月と後から遅れて支払い通知が来ます。
お金が残っていなくて支払いができないといったケースは避けるようにしてください。
不動産売却の税金に関するQ&A
不動産の所有期間が5年以下の場合「39.63%」、5年超の場合「20.315%」です。また、マイホームを10年超えて所有しているときの軽減税率の特例もあります。
所有期間によって大きく税率が異なるので、売るタイミングに注意してください。
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除などを利用する方法も一つです。また、取得費や譲渡費をどうするかによって税額も変わってきます。
費用に関しては細かい決まりがあるのでチェックして含めらるものは含めるようにしましょう。
相続した家に住んでいたかどうかがポイントです。住んでいれば特例の適用があり、適用できれば税金を安くできる可能性が高いです。
住んでない場合は、通常の売却の税金と同じように扱われます。
確定申告は不動産を売却した翌年の2月中旬から3月中旬に行うのが基本です。利益が出ていなければ申告の必要はありません。
だだし、譲渡益・譲渡損失の特例を適用したいときは、利益がなくても確定申告をするようにしましょう。
譲渡所得税があれば、所得税と特別復興所得税は確定申告の期間内です。住民税は6月です。住民税は後から遅れて支払い通知が来るため気をつけてください。
もし、お金残っていなかったら納税ができません。
まとめ
資産家でもない限り土地や建物の売却をする機会は多くはないでしょう。そのため、税金に関して馴染みがないのは仕方ないです。
本記事の内容を参考にすれば基本的な知識を知って、税理士や不動産会社の説明をさら理解できるようになるでしょう。ただし、税金は特例ができたり仕組みが変わることが多いので気をつけてください。